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Vol.2 サンドリーズショップ紹介シリーズNO.1 ATAO's Story

「ものつくりへの徹底的なこだわり」瀬尾氏の素材への思いとジャパンメイドスピリッツ

瀬尾氏にATAO創業の理由を聞くと、「ただ純粋に“本物”のものつくりをしたかった。」という至極簡単明瞭な答えが返ってきた。いささか拍子抜けするくらいのこの一言が、逆に今後のインタビューでどのように掘り起こされていくのか、非常に興味深く聞き入ったのだが、案の定、というか想像以上にデザイナー瀬尾氏のものつくりへの思いの強さとそれを具現化するための苦労、またその思いや行動の基礎を作った生い立ち等、ATAOが益々好きになってしまう数多の逸話を語ってくれた。やはり瀬尾氏とATAOは同体なのだ。それは特に瀬尾氏がこだわる、ものつくりすべての工程の細部にわたるまで表現されているのだ。「行動するデザイナー」瀬尾氏の生き様を、ものつくりにおけるポイントで切り取ってルーツを探してみよう、と特に瀬尾氏がこだわる「素材」と、その素材感を存分に表現する小田急百貨店新宿店ショップについて、インタビューを試みた。

幼少期に育まれたつくり手への憧憬

―瀬尾さんがデザインを除く「ものつくり」製造工程において最も重要視しているポイントは何でしょうか?-

ATAOのファーストライン瀬尾氏
「私のものつくりの原点は「素材」です。商品をデザインする際、まず最初に素材からイメージします。ATAOの全てのデザインの原点は、市松模様をプリントした「帆布(はんぷ)※1」にあります。使うほどに柔らかく味が出る、ナチュラル感が強い、丈夫等この帆布(はんぷ)素材の特性をベースにして合わせの素材、例えば革やファスナー、ステッチにいたるまでの素材詳細を決定しました。

※1 帆布(はんぷ):キャンパス生地で、トートバックなどで使用される綿素材による織物

―何故素材にこだわるのでしょうか?しかも帆布(はんぷ)生地にこだわる理由は何でしょうか?-

瀬尾氏
「実は、私の生まれ故郷であり、幼少期を過ごしたのが、ジーンズ生地生産地として世界的に有名な倉敷地方(岡山県)だったのですが、祖父の仕事がお米の配達で、子供のころよく祖父と一緒に近所の織物屋さんをまわっていました。20年以上前は景気も良かったらしく、夜遅くまで煌々と工房に灯りがともっている街並みが鮮明に記憶に残っています。配達先の職人のおじさん達が「どうや、おっちゃんの作った生地が世界一のジーンズブランドになるんやで!」と誇らしげに語る職人さん達を見て、子供ながらに非常に憧れてみていたものでした。「大人になったらこんなスゴイ人たちと一緒に仕事がしたいなあ」という思いを持っていました。
ところが、実際に社会人になってから故郷に戻ると、低コストを求めた生産地の海外移転や後継者不足、高齢化等が重なり、一部を除き多くの工房が廃業に追い込まれている現状を目の当たりにしました。高齢化その中でジーンズを織る強力な織機である、「力織機(りきしょっき)※2」のルーツに立ち返った帆布(はんぷ)生地※3を織っている工房の存在を知りました。

※2 力織機(りきしょっき):丈夫な生地を生み出す力強い織機
※3 帆布(はんぷ)生地は、もともと帆船用に作られたもので、倉敷や尾道等、海洋交通の要所で木造船と並びに栄えた製造産業のひとつと言える

幼少の思いを具現化する、しかも故郷で出会ったこの帆布(はんぷ)生地を見た瞬間にATAOの象徴となる生地が決まったのです。

―学生時代を神戸で過ごしたとおっしゃっていましたが、そこでブランドと土地の価値とのいわゆる「価値の連鎖」を見出したのですよね?-

瀬尾氏
「はい。その神戸ブランドを創造する際「神戸トラッド」におけるトラッド感、いわゆる「かっちり感」を更に付加する必要がありました。帆布(はんぷ)生地は本来ナチュラル感の高い、使い込むほどくたっとした味わいが出る素材ですので、この市松柄を載せたレザーコンビや、トラッド感あふれるオールレザー商品も派生商品として生まれてきています。

使い込むほどに「味の出る」はんぷ×レザーのコンビ素材

使い込むほどに「味の出る」帆布(はんぷ)×レザーのコンビ素材

瀬尾氏の幼少期の倉敷の「職住接近」の町並み

瀬尾氏の幼少期の倉敷の「職住接近」の町並み

幼少の瀬尾氏、祖父と一緒に

幼少の瀬尾氏、祖父と一緒に

力織機(りきしょっき)

力織機(りきしょっき)

ATAOオリジナル生地開発秘話

―ATAOの素材つくりで最も苦労した点は何ですか?-

瀬尾氏のバックつくり修行期のひとコマ瀬尾氏
「やはりATAOの象徴サインである市松模様のプリントです。帆布(はんぷ)素材は帆船用に作られていたほど、丈夫で強力な綿油を含んでおり水はけがよい素材です。そのため、帆布(はんぷ)素材にプリントをする技術が生地産地にはありませんでした。全国探しまわった結果、京都に「なんでもプリントいたします。」というシルクスクリーン※4の老舗の工房を京都で探し当て、なんとか実現に至ったのです。ただしこの版は90cm四方しかないとても小さく、何度も重ね合わせなければならない、また少しでもずれたら全てやり直しという、非常に手間隙のかかる作業であることは確かですので、量産化は出来ません。商品が売り切れた場合、半年近くお待たせしてしまう点が非常に申し訳なく思いますが、ものつくりにかける手間は決し手を抜かずにいきたいと考えています。

※4 シルクスクリーン:版画印刷の手法で、薄絹のスクリーンを張り合わせ、インクの通る部分と通らない部分を作り柄を印刷する伝統的な技術

―そのような素材調達ネットワークはどのようにして築いたのですか?-

瀬尾氏
「実はATAO創業を決めサラリーマンを辞めてから、準備期間を3年持ちました。そこで三つ目標を定め、実効しました。
一つ目は当然お金です(笑)
二つ目は「全国のものつくりにおけるネットワークつくり」でした。「全国行脚※5が出来、自分の時間が持てる仕事」を選びました。

※5 瀬尾氏は当時有名学習塾の全国主要都市を回る「進路マーケット紹介」のコマ(授業)を担当しており、出張で言った先々で各地の産地や街の特性を調査していた

三つ目はものつくりそのものの勉強です。オーダーメイド専門のバック工房に通いつめ、設計図のみならず、自分自身でバックを作れる技術を身に付けようと思いました。なぜなら、それにより職人方々の思いを感じ、またお客様の声を職人の方々へ伝えられるようになるために必要なスキルだったのです。」

―お客様重視でありながらも、作り手と密接に関係するネットワークの土壌が出来上がっている訳ですね-

瀬尾氏
「この準備期間で培ったネットワークとノウハウが今のATAOのものつくりを支えているといっても過言ではありません。私はものつくりをする際、まず素材からイメージすると先ほども申し上げましたが、その時には実はその素材を作っている工房の方々の顔も同時に浮かべながら実現のための方法を考えるように自然となっています。
ですから、お客様(使い手)と職人(作り手)の顔が見える、ショップと工房をつなぐ架け橋としてのATAOのあり方を目指す以上、常にネットワークつくりを怠らないよう日々努力をしています。

店つくり 新宿店ショップへの思い

―ものつくりに負けず劣らず重要な要素だとおっしゃっていた「店つくり」について、ATAO小田急百貨店新宿店ショップへの思いをお聞かせください―

売場つくりへの細部へのこだわり

随所にこだわりを見せるATAO新宿店瀬尾氏
「サンドリーズ・アレーへの出展依頼が来たときは、最初「冗談だろ?」と思っていました。まだできたてほやほやのちっちゃな神戸のブランドを、東京のデパートがわざわざ選ぶはずがない!しかも2階の玄関入口(笑)。しかし、まったく新しい、一から作り上げる売場であり、また、流行一辺倒ではない本物重視志向や、働く女性の生活シーンを応援する商品、ブランドショップ編成を行うと聞いて、ようやく本当に必要とされていることを実感出来ました。まさにATAOの理想と合致した店つくりを目指している売場が、サンドリーズ・アレーだったのです。」
「全く新しい売場(ショップ)つくり」は神戸本店とは正反対のコンセプトです。新宿店は決して広い空間ではないので、様々な工夫を施しました。ちなみにショップデザインについては通常の店舗専門設計者ではなく、マンションを中心とした大型の空間デザイナーに手伝ってもらい、通常のショップでは中々出ないアイディアを随所に組み込むことができました。「浮き上がる壁面棚」「主張するショップ内ウィンドー」等の、ATAOの持つ上質感が伝わるような斬新なアイディアが随所に表現されています。
最初に話は戻りますが、ATAOのものつくりテーマは「誰しもが知っているオンリーワン」ですが、ショップで過ごしていただく時もオンリーワンを肌で感じていただけるような空間つくりを目指しています。

シルクスクリーン工程

細かいマスに繰り返しインクを張り合わせる手間のかかる作業

年々少なくなる産地の技術

年々少なくなる産地の技術

浮き上がる壁面

浮き上がる壁面

主張するウィンドー

主張するウィンドー

市松ライン・ウォレット

市松ライン・ウォレット