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Vol.3 サンドリーズショップ紹介シリーズNO.2  The otherside of Motherhouse

最終章 マザーハウスのこれから

マザーハウスを一つの会社として見たとき、山崎氏の目はさらに真剣になる。それは会社の今と将来の経営をロジカルに支える立場としての責任に裏打ちされているのかも知れない。そして、小田急百貨店新宿店のサンドリーズアレーに出店したことで感じたこと、やりたいこと、やらなきゃいけないことが見えて来たと言う。その詳細を聞いてみた。

最高の理想を言えば、途上国の最大のポテンシャルを引き出している会社と言えば、世界の誰もが「マザーハウス」だと連想して貰えるようになることです。

「マザーハウス」で山崎さんが考えるこれからのこと聞かせていただけますか?

実は今のところですが、山口が起業して間もない頃に僕が案として作ったマザーハウスの成長曲線通りに会社が伸びてはいるんです。これはある意味予想通りでもあり、嬉しい誤算もあったんですが、たくさんの人々に支えられ、たくさんの間違いも犯しながら、とにかく途中経過の数字、財務的には順調に来ているんです。でも数字以上に、中にいる我々自身の業務やスキル面が、お蔭様でいろいろ勉強させていただいて、失敗もたくさんしながら、ようやく少しずつ軌道に乗っているイメージが持てるようになって来たことが大きいですね。実際理想を挙げればまだまだなんですが、数字は後から付いて来ると思いますし。とにかくこの2年間のスパンに限って言えば、目標は間違い無く達成していると思いますし、出来過ぎと言っても良いかも知れません。
この後、という話なんですが、今現状での進捗には満足している話をしましたが、それは最初の目標に対しての話で、現実マザーハウスは本当にまだまだ小さな会社です。メディアをはじめ、いくつかのインパクトやトピックスを以って我々が注目されたことは本当に幸運でしたが、実際に市場や経済に対して数字的なインパクトを持っているかと言えば、当たり前ですがまだまだ全然な訳です。商品に目を移してみてもまだまだお客様にとって制約はたくさんあるし、その制約の中であえて選んで頂いてるような事も多々あります。
その制約の中にある限り成長は見込めないですし、哲学や理念だけではなく、市場や社会に対して、プロダクトとして、会社として、数字として一定以上のインパクトを与えられるようになりたいです。

そのためにも商品に関してはより高いセンスやラインナップも求められるでしょうし、会社としては規模も必要でしょう。また、途上国発のブランドを作ることが会社の目標ですが、その途上国はバングラデシュだけでは無いですし・・・。世界に通用するブランドを目指す以上は日本だけに留まらない、グローバルな視点での出店計画やマーケットの把握に努めなくていけないですし・・・。最高の理想を言えば、途上国の最大のポテンシャルを引き出している会社と言えば、世界の誰もが「マザーハウス」だと連想して貰えるようになることです。それが究極の夢ですね。でもそのためにはとにかくやるべきことは山積みです。具体的なことを挙げたらキリが無いでしょうね。なんでもそうですが、本当に本当にベンチャーって大変ですよ(笑)
でも、マザーハウスにいると何でも出来るんです。金融もモノ作りも、その他やりたかったことが何でも出来るんです。だから大変ですけど、今はその可能性の方が自分にとっても大切なことなんです。

ショップスタッフと打ち合わせする山崎氏

ショップスタッフと打ち合わせする山崎氏

Eriko Lineではより高いファッション性とメッセージ性が打ち出されている。

eriko lineではより高いファッション性とメッセージ性が打ち出されている。

ステーショナリー含め、小物雑貨も充実している。

ステーショナリー含め、小物雑貨も充実している。

今、制約を打破するための課題としてセンス、つまりファッション感度の話が出ましたが、今まで路面店や催事で商品を販売していた時と、当店新宿の小田急百貨店のサンドリーズアレーに出店してからで、何か変わったことやヒントになるようなことありましたか?

あります。まずは商品力をもっともっと上げないといけないなーってひしひしと感じました。つまりバッグとしてどうか、と言う視点をさらに磨かないといけないって思ったんです。絶対的なお客様の数も増えましたし、当然ですがマザーハウスのことを何も知らないお客様がたくさんいらっしゃって、そのお客様はマザーハウスの商品そのものだけを見て買物をなさる訳です。もちろん今までのお客様でもいらっしゃったんですが、百貨店に入って、通りすがりの一見さんが一気に増え、その人達を相手にする機会が増えた事で、より顕著にファッション軸だけで見た、マザーハウスの理念や背景なんかは買物する上では一切関係無い方達、ただバッグとしての完成度だけを求められる方達が凄く増えたんです。ですから、このサンドリーズ・アレーに出店してから、山口を中心に今まで以上にもっともっと考えて、モノを作るようにしないといけないって思いました。
つまり、山口が理想としている、「カワイイ・カッコイイ」からバッグを買って貰い、その先に途上国があるようにしたいって言うことです。それをいよいよ本当に具現化しないといけないんだって。社会企業としてではなく、あくまでもバッグブランドとしての「マザーハウス」の次なる課題をかなり強烈に感じさせていただきました。

彼女が社長だから自分がこの仕事をしているってはっきり言えます。彼女が社長じゃなかったら絶対やっていないですよ!こんな立場で、こんな大変なこと(笑)

最初のマザーハウス製品。全てはこれから始まった最後の質問です。山崎さんが今までで一番感謝したい人は誰ですか?家族以外でお願いします(笑)

家族以外ですか・・・?(笑)そうですね、やっぱり一番感謝したいのは山口ですね。彼女がいなければ自分はこうしていなかったですし、変な話、自分にもビジネスでやりたいことが無い訳ではなかったんですよ。でもそれを差し置いてもやりたいビジネスは山口がやりたいビジネスだからで、心底リスペクト出来る彼女が社長だから自分がこの仕事をしているってはっきり言えます。彼女が社長じゃなかったら絶対やっていないですよ!こんな立場で、こんな大変なこと(笑)

今日は本当にありがとうございました。

以上でマザーハウス副社長山崎氏のインタビューは幕を閉じた。 礼儀正しく、ひとつひとつ言葉を選びながら、慎重な語り口で話し出す。しかし、一度しゃべり出すととめどなく言葉が溢れる・・・。そんな活気とエネルギーに満ちた若者、山崎大祐氏28歳。彼の行動の礎となることは常に人であり、それは彼が多感な幼少期から培った非常に根源的な疑問である、「人間とは・・・。」と言う真理の追究こそがその端となっている。
真理への探求は物理学への傾倒、アカデミックな金融の勉強へとつながっていく。
しかし最後にこの仕事に辿り着いた理由は、途上国を自らの足で見て、歩いた経験をもととする、「真の豊かさ」への疑問であり、大いなる羨望であったのかも知れない。マザーハウス代表山口絵理子氏が標榜する起業の起点とも奇しくもつながる訳であるが、山崎氏が会社に賭ける思いを熱く語る様を見るにつけ、山崎氏と山口氏、生きて来たその道程は違えども、その志を共にすることは運命の導きであったのかも知れないと思うまでに至った次第である。

最後に印象に残ったことをひとつだけ・・・。
2年前、何時間も店頭に立ち続け、販売するもどうしても売れない。山口氏の思いが詰まったバッグを何とか売りたい。その思いだけを胸に何時間も店に立つ外資系金融マン。そしてついに一つが売れた時のエピソードを彼が語ったとき、私(筆者)は見逃さなかった。確かに彼の目には涙が宿っていたと言う事実を。
その時私には大きな感情の波が去来し、そしてずっと彼らに抱いて来た感覚が確信に変わったのである。彼らの頑張る原動力は「これ」なのだと。つまり、溢れる感情の発露は涙であれ、途上国でバッグを作る事業であれ、人が人に感謝し、思いやりと慈しみを持つ世界を願うこと。それらは全て「人」に帰結するのだ、と言うことを・・・。
どんな言葉よりも、一滴の涙がそれを雄弁に語っていたのである。

サンドリーズ・アレー
担当バイヤー 安藤寛之